8/14(土)に開催された第5回 d.school Starter Kit 日本語版のワークショップに参加してきました。
主催はデザイン思考研究室。株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所の西村悠さん(@yunishimura2)が中心となって運営されているフェイスブックコミュニティです。
デザイン思考の入門者にピッタリのワークショップなので、参加した感想をレポートしてみたいと思います。
ワークショップに参加したきっかけ
最近になって、わたしが勤務する四国の職場でもデザイン思考への関心が高まってきているのを感じるようになりました。社内勉強会の場を使って、自分たち主催のワークショップを開催したい!と考えていたのですが、入門者のレベルに合わせたちょうどいいツールキットを見つけられずにいました。
そんな時に、ワークショップを広報していた西村悠さんのTwitterアカウントを見つけたのが参加のきっかけでした。
実は、ワークショップが開催される週に、新型コロナウイルスのPCR検査を受けなければならない状況になってしまい、ぎりぎりまで参加できるかが分かりませんでした。当日の申し込みにも関わらず、参加を受け付けてくださった西村さんには感謝しています。
d.school Starter Kit 日本語版とは
スタンフォード大学のd.schoolと言えば、言わずと知れたデザイン思考のメッカです。d.school Starter Kit 日本語版は、そのd.schoolが提供するデザイン思考入門のワークショッププログラムを日本語訳したものです。
日本語版の公式サイトでは、このプログラムのことを、以下のように説明しています。
このオンラインデザイン思考入門では、様々なデザインの技量、方法論、心構えに触れることができます。ビデオを見て、デザインが実際にどのように機能するかを学べるだけでなく、パートナーとのアクティビティや会話によって「デザインとは何か」を理解できます。3時間で20以上のコンセプトとツールを学び、人間中心のデザインを自分の仕事に応用できるようになるでしょう。
https://d-school-starter-kit.mystrikingly.com/
このプログラムをボランティアで翻訳してくださったデザイン思考研究室のみなさんには、本当に頭が下がる思いです。より詳しい内容を知りたい方は、リンク先の公式サイトを見てください。
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d.school Starter Kit ワークショップのよかった点
冒頭でお伝えしたとおり、わたしは職場でデザイン思考をひろめたいと考えているので、今後わたしがファシリテーターになった場合のことも考えて、このワークショップのよかった点を振り返ってみようと思います。
このワークショップは、参加者とファシリテーター双方に対して、非常によく「デザイン」されたワークショップです。最低限の知識と準備で最大限の効果が得られるように工夫されています。
過去に参加したワークショップでは、参加者が置き去りになってしまい、消化不良になっているケースもありました。デザインのワークショップなのに、参加者のことを考えられていないというのは、皮肉なものです。
その点は、さすがはd.schoolと言ったところでしょう。ワークを楽しみながら、3時間があっという間に過ぎてしまいました。
入門者に最適なペアワークという形式
このワークショップはペアワークが中心となっています。この2人1組の人数構成は、主催者、参加者の双方にメリットがあり、入門者向けのワークショップとしては最適だと感じました。
個々のワークの内容は入門者にも分かりやすく、ファシリテーターが同席しなくても、参加者だけで進められます。そして、ペアワークでは話す場面が必ず平等に回ってきます。参加者は「会話はひとりずつ」といったブレインストーミングのルールを気にする必要もありません。
実務でデザイン思考を活用する場合には、多様なバックグラウンドを持つメンバーを集め、異なる視点や専門性を取り入れるべきです。しかし、入門者ばかりが集まったワークショップでブレインストーミングをすると、ファシリテーションの難易度が上がってしまいます。
d.schoolの講師が動画で指導してくれる
ワークショップ内のアクティビティについては、Starter Kitの動画内でd.schoolの講師が説明してくれます。これは、次の3つの点で優れているなと感じました。
- d.schoolのワークショップと同様の体験ができる
- ファシリテーターのスキルに関係なくワークショップを開催できる
- ワークショップの品質を一定に保つことができる
d.schoolのワークショップと同様の体験ができる
d.schoolのブランドを信仰するわけではありませんが、デザイン思考に興味がある人は、デザイン思考の教育分野で実績のあるd.schoolのツールキットを使ってデザイン思考を体験してみたいと思うはずです。(わたしもそのひとりでした。)参加者にとっては、ワクワクする体験を得られるでしょう。
ファシリテーターのスキルに関係なくワークショップを開催できる
社内で草の根活動のようにデザイン思考をひろめようとした場合、デザイン思考を学んだファシリテータの育成が課題となり、なかなか前に進められません。d.schoolの講師による説明動画があると、ファシリテーションの難易度が大きく下がります。デザイン思考をひろめていくうえでは非常に心強いです。
また、ワークショップの参加者の中には、「そもそも論者」がいることがあります。そもそもなぜこのワークをやらなければならないのか。本当に役に立つのか。そういったことが気になるタイプの人に、「まずやってみる」というデザイン思考のマインドセットを理解してもらうのは、なかなか骨が折れる作業です。
動画で講師が説明をしてくれるというのは、そういった人達にとにかくデザイン思考を体験してもらえるという効果も期待できそうです。
ファシリテーターのスキルに関係なくワークショップを開催できる
これはワークショップの主催者側のメリットですが、ワークショップがパッケージ化されているので、ある程度の知識を持った人が開催すれば、誰が開催してもある程度の品質を担保できるようになっています。
オンライン開催を前提としている
オンライン開催に重要なのは、不意のトラブルで進行が中断しないように工夫されているということです。
受講中に「すごくスムーズなワークショップだな」と感じましたが、あとからStarter Kitのスライドを読んで納得しました。Starter Kitのスライドでは、ファシリテーター向けに、Zoomを使った進め方がかなり細かく説明されています。
ファシリテーターの関根さんは、今回がはじめてとのことでしたが、そんなことを全く感じない進行でした。準備と練習をすれば、自分でもできるかもしれないと思わせてくれます。
実は、受講後のアンケートに、「Zoomを使った運営方法を教えてほしい」と書いたのですが、これは全く必要のない質問でした(参加前にkitの内容を読んでおくべきでしたね)。
また、開催に必要なものが紙とペンだけというシンプルさも、スムーズな進行に役立っています。紙に書いた内容をペアで見せ合うだけでも、オンラインのワークが成立するというのは新たな発見でした。
MURALのようなコラボレーションツールを使って、オンライン上で付箋をペタペタと貼っていくようなワークショップもありますが、参加者にツールの操作を覚えてもらったり、ZoomとMURALのあいだを行き来してもらうのは、結構なストレスだったりします。
オンライン開催で入門者を対象とする場合には、これぐらいシンプルな内容が最適だと感じました。
d.school Starter Kit を使った今後の活動について
今回参加させていただいたワークショップで、入門者に最適なツールキットを見つけることができました。当初の目的どおり、まずはこのStarter Kitを職場の勉強会で使ってみます。
最後に、このような素晴らしいStarter kitを翻訳してくださった デザイン思考研究室のみなさんに感謝を伝えたいです。いつかわたしも デザイン思考研究室で貢献できるよう、デザイン思考の勉強と実践を続けていこうと思います。