成果を出すための注意点
デザイン思考ワークショップでの失敗を振り返る
先日、職場で開催されたデザイン思考のワークショップへ参加しました。開催後のアンケートを見ると、参加者の評価は悪く、期待していたことと実際の体験には、かなりのギャップがあるようでした。
ワークショップに失敗しても、エジソンのように「ただ、1万通りの、うまく行かない方法を見つけただけだ。」と言えればいいですが、職場に広めようとしている場合、初参加の体験は大事にしたいものです。
わたしがはじめてワークショップへ参加したときの体験を振り返り、ワークショップの選び方や臨み方について、注意点を整理してみたいと思います。
成果を出すための3つの注意点
ユーザに共感できるようなカリキュラムを選ぶ
デザイン思考の原則の中でも、最も重視されるのが「ユーザ中心主義」という原則です。ワークショップだからといって、想像の中だけでユーザを理解しようとすると、どこまで突き詰めても納得がいく答えにたどり着きません。
もし、ワークショップに期待することが、翌日から使えるような即効性であるなら、ユーザリサーチがあるようなカリキュラムの方が役に立つでしょう。
ユーザとの対話をはじめとするユーザリサーチがない状態で、「さあ、ペルソナを作りましょう!」、「共感マップ(エンパシーマップ)を作りましょう!」と、ステップを進めていったところで、ユーザへの共感には限界があります。「推測」から得られる情報だけをたよりに議論を進めたところで、いつまでたってもメンバーの納得感は高まりません。
ファシリテートの経験者に参加してもらう
ワークショップでよくあるのが、チーム内でファシリテーターを順次交代しながら、ステップを進めていくというやり方です。この方法の良いところは、誰もがファシリテーターを強制的に担当させられることで、当事者意識をもってワークショップに臨めるということです。
しかし、誰もがファシリテートを得意としているわけではありませんし、デザイン思考を実践したことがない人が、その場の説明だけでチームを引っ張っていくことができるとは思えません。いつも一緒にいる気心の知れた仲であれば、メンバーのサポートも期待できますが、ワークショップのために集められたメンバーだと、それもなかなか難しいでしょう。
参加メンバーが納得していないアイデアで進んでしまうと、後続のステップは悲惨な結果になります。時間が潤沢にある場合はいいですが、ワークショップの少ない時間の中で、前のステップに立ち戻って考える余裕はないでしょう。
チーム内で作業を進める際に、ファシリテートをサポートしてくれる講師がついてくれるのか、どの程度ファシリテートに参加してくれるのか、デザイン思考にかかわらず、ファシリテーターの経験のあるメンバーが参加しているかといったことは、参加メンバーがワークショップを納得して終えることができるかに、大きくかかわってきます。よいワークショップには、よいファシリテーターが必要です。
最低限の前提知識を習得しておく
デザイン思考のまったくの初心者がワークショップに参加するのであれば、最低限の基礎知識は事前に習得しておくことをお勧めします。
「デザイン思考は実践が大事」とはよく聞く話です。だからといって、何の前提知識もなく参加するほうが良いとは思いません。事前にデザイン思考とは何かを調べ、わからない点、腑に落ちない点をもって臨むほうが、理解は早いです。
また、ワークショップで扱うツールキット(問題発見や解決のためのツール群)を、実務の場で使おうとする場合には、その職場にあった工夫(カスタマイズ)が必要になるでしょう。そういった意識をもって臨むことが、実務で使えるようになる近道です。
幸いなことに、デザイン思考に関する本や、ネット上の資料は、かなり豊富にありますので、情報に困ることはないでしょう。
最後に:ワークショップのゴールを自分で決めておこう
ワークショップを選ぶ場合には、自分たちが期待する体験は何か、そして、ワークショップの中でそれが得られるかをどうかを、カリキュラムを見て事前に判断しておくとよいでしょう。
そうは言っても、残念ながら、1回や2回ワークショップに参加したからといって、いきなりデザイン思考が自由自在に使えるようにはなりません。大きな期待をすればするほど、「デザイン思考って使えないな」という結論を安易に導いてしまいます。
参加するメンバーの経験や、教えてくれる講師のスキル、デザイン思考を使うテーマなどによっても、ワークショップの難易度は変わってきます。
はじめは多くを求めず、失敗を前提に臨むという割り切りも必要です。最後に参加者が「やってよかった」と思い、次のアクションにつながるのが良いワークショップです。